CC BY-SAの商業電子書籍は成立する?(いや、どうだろう……)
NO CAT NO LIFE - てぐれ / 第1話 | 一迅プラスに関する重大なネタバレがあります。
この作品に限らずSCP関連作品というのは商業作品としていくつか発表されているのだけれど、CC BY-SAライセンスで商業連載するのは大変そう、という直感がある。なぜなら、GPLがある種の人々にとって厄いのと同じように、ShareAlikeライセンスもまた、ある種の人々にとって厄いものとなるだろうからだ。
CC BY-SAライセンスというのは、平たく言えば「作者を明示し、かつ同じライセンスを適用すれば、転載および改変を許諾する」というものだ。これがもたらす帰結は以下の通り。
- 二次創作できる(これはまあ多くの人が想定するところ)
- 転載できる(誰かがそれを別の場所で公開してもよい)
- 海賊版の流通を止めることができない(というか、海賊版ですらない。正当な許諾の行使だ)
- 改変したものを流通させることができる
- フリー素材扱いできる(たとえAll Rights Reservedでも同じ運命をたどるのだとしても、より合法的に)
- ヘイト表現や作者の意に反するエログロ表現にさえ使える(著作者人格権の縛りはあるんだけど、原則的には)
- 電子書籍にいわゆるDRMを適用できない
原作者は、出版社は、これらを受け入れる意志があるということに、少なくともライセンス上はなりそうなもので、つまりバチバチに覚悟がキマっている。実際、ここの記載を見る限り、第三者による二次創作や販売は想定されているようだ。
読者の反応として見られた「ライセンス書いてあるからちゃんとしてる」のように私は思えなくて、むしろ出版社はそれがもたらす帰結を理解してGOを出したのかかなり怪しんでいる。たとえば、NCではないから商業利用や有償配信することは問題なくできるとしても、転載が許諾されるのだから単話読みに課金する公式サイトは実質的に無意味となる。光学的にスキャンされたらどうしようもない紙の書籍はともかく、DRMつきの電子書籍を売るな、は出版社の商習慣的に成立するのか甚だ疑問だ。実際、SCP関連の商業作品は普通にKindleで売られている。正直なところ、個人的にはこの判断、正気とは思えない。もちろんSCP関連作品を名乗りつつCC BY-SAでないのは、それはそれでライセンス違反だけど。果たしてこれはリーガルチェックを通したものなのか。通したあとならリーガルは何をどう判断したのか。興味がある。ライセンス違反ってライセンサーしか訴えを起こせない気がするので、それで実質的に無効化できると踏んでたりする? 最初は、SCPの側が個別ライセンスしたことを疑いさえしたけど、でもそうしたらCC BY-SAと表示する理由がなかった。
CC BY-SAが適用されると謳っているSCP関連作品の電子書籍にDRMがかかってるのか、自分で買って確認するほどの熱心さは私にない。結末は、君自身の手で確かめるんだ!