ロードバイクという存在について
ロードバイクの最大の魅力は、なんといってもその効率良く走る様子だろう。なんとなくクランクを回すだけでサイクルコンピュータは25km/hを指し、ペダリングを止めたとしても驚くほどの距離を惰性で走ることができる。特に、よく整備されたサイクリングロードを走っているときの気持ちよさは素晴らしいものがある。信号も交差点もなく、舗装も滑らかであれば、自然と巡航のペースも早くなる。一方で、ロードバイクを気持ちよく走らせることができる道はあまり多くないと感じる。自動車が侵入できない河川敷の道も、砂や落ち葉で路面が滑る、突然舗装が切れ砂利道へと変化する。一般公道も専用レーンがあれば良いが、自動車と安全に共存できそうにない道幅、ざらざらでこぼこの舗装がほとんど。更には、こちらの走行経路を顧みない周囲の交通まで加わる。こちらのスピードの速さも、周囲の環境の振る舞いも含めて、公道で行うにはあまりにも過激なスポーツだ。
そして、走りのみに焦点を置けないとき、ならば実用的に使おうとしても、良路上の走行性能へ全振りした特性が逆回転を始める。輸送手段としては、荷物を乗せる能力が限定的だ。フレームバッグの類は走行中に必要なものを積載するためのものだ。リアキャリアをつけることはできるが、重量的にも空力的にも性能を――ひいては楽しさを――減じることになる。移動手段として用いようにも、盗難のリスクが大きすぎる。スタンド未装着の場合は駐輪すること自体も場所を選ばなければならない。天候が悪化した際の耐性も低い。昨今はディスクブレーキ化とそれに伴うタイヤ幅の増大傾向、グラベルバイクの流行もあり、雨天での走行性は向上していると言える。それでも走行性能を追求すればするほど、タイヤのパターンはスリックに接近し、泥除けは軽量化のため省略される。
振り切った存在ではない折衷的な存在、クロスバイク、グラベルバイクが流行るわけである。