ラグジュアリーブランドの価値を問うな

ダイバーズウォッチというジャンルがある。高い潜水性能と計時機能を有するこれらのモデルは、そのスポーティなイメージから人気である。しかし、これらの時計はその名に反し、今日のスクーバダイビングで使われることはあまりない、らしい。実際にはダイブコンピュータと呼ばれる、高機能なディジタル式の時計を使っている。ダイビングのために設計された時計と銘打たれているにもかかわらず、ダイバーズウォッチは実際のダイビングには使われず、むしろ「ダイビングのために設計された」という 情報を食べる 消費者たちによって好まれている。彼らは情報や物語という虚構を愛している。ダイバーズウォッチという概念の純粋な信奉者だ。

ここで思考が飛躍する。ラグジュアリーブランドの製品を、リセールバリューやコストパフォーマンスで選ぶことはおかしいのではないか。それはまさしくラグジュアリーブランドを金儲けの道具や実用品、コモディティの一つとして扱うことだ。そしてそれは、ラグジュアリーという名に反する、侮辱的行為ではなかろうか。 「真に」 ブランドを信奉する者は、ただ 「そのブランドだから」 を理由として、それを欲しなければならない。

もちろん、ラグジュアリーブランドの経営者は強かだから、価格を吊り上げることの効能を熟知しており、そのような投機的な動きさえ自己利益のため徹底的に活用し、まさにその狙い通りに製品を ラグジュアリー であり続けさせることに成功しているのであろうが。

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