Moaner

「この場所には出会いがある」という主張は、優れた人、魅力的な人が言うならば、それは当然のことだ。そこがどんな場所だとしても常に真となるだろう。そして、当然それは万人に対して適用されるわけがない。誰もが平等に幸福になれるわけではない。そんなことを言うのは自身の人間的優位性のマウンティングか、あるいは自身の人間性の優越に無自覚、無頓着であるかのどちらかだろう。孤独であることが嫌だからといって、それが解決可能であることは保証されない。嫌なことでも付き合っていかなければいけないものはたくさんある。ましてや人間関係、その人の資質、人格が直接的に反映される場である。割が悪い賭けには出ないことが合理的だ。拒絶が前提されるなら、関係の構築を望むべきではない。基準率として、女性は男性から関わられたくないことを考慮すべきだ。

なにせ、ほぼ全ての女性が痴漢や嫌がらせ、窃視のような性被害を受けているらしい。AVをはじめとするメディアに日本の男性だけが有害な影響を受けているらしい。このような、被害者、当事者の証言や専門家の意見は単なる主観にとどまらない。権威ある学者が、弁護士が、根拠を、数字をもってそう言っている。加害する側の性は忌避されて当然だ。全ての男性が犯罪者でなくても、ほとんどの犯罪者は男性である。これは統計的事実だ。男性加害者から被害を受けた女性が、加害者でないものを含めた男性一般を忌避することはおかしなことではないし、否定できるものでもない。独身女性と既婚男性の幸福度が高く、既婚女性と独身男性の幸福度が低い統計がある以上、そしてこれまでの社会が男性優位であったことは疑いがない以上、独身者が増えている現代は女性にとって喜ばしい、公平な社会に近づいている。公平さや正しさのため、(既得権益を得ていた側に)多少不幸になる者がいたとしても、それは必要な痛みなのだ。女性は独身でいる方が、男性に負担をかけられないほうが、幸せだし、そんなに言うなら男性は男性同士で支え合え、現に女性同士が幸せのうちにお互いをケアし支えあっているのと同じように、という意見をよく見る。女性の前から、女性との関係から、男性は消えて。そういう発言は確かに存在する。女性はギバーであり、テイカーたる男性に搾取される被害者だ。家事もしないのに同じ年収の共働きを求める男性は許されない。男性は女性にとって――もしかしたら男性自身にとっても――不快で迷惑で有害で度し難い存在なのだ。男性は女性にものすごく恨まれ憎まれているが、しかしそれを甘受すべき身分であることもまた動かしがたい事実なのだ。

たとえ性欲があることがごくごく ふつう のことだとしても(でも普通って何?)、不同意性交等が罪である世の中になったわけだし、“Yes means yes”で行くしかない。「性欲があったとしてもお前で解消したくはないです」となるのはもっともな話で。ほら、漫画にあったでしょう。

……興味のない人から向けられる好意ほど 気持ちの悪いものってないでしょう?

って。

私は、そのように描写される、日本に暮らす女性たちのように、圧倒的な社会的困難を強いられているわけではない。なら女性たちが揃って男性に対して批判するようなことをしない方、欲望しない方が、私以外の全員――とくに全ての女性にとって――望ましいことだろう。世の中の多くの女性が嘆き悲鳴を上げていることは「求め方」「相手を見る作法」すら多くの男性が実現できないことの証拠だ。その少数の「実現できる側」に、ただでさえ至らぬ自分が到達しうると考えるのは、とんだ思い上がりだ。私は自身が例外であるという証拠を持っていない。故に例外であると主張する資格がない。育児や家事を分担しろ、キャリアを分断させるな、女性を気遣えと言われているのに、それを実現できている男性が少数派であることは、女性から見て不適格が男性のデフォルトであることを示唆する。それどころか、男女差別的な社会が温存されていることが、男性による女性蔑視の根強さ、デフォルト性を強く示す。そのような中で、自分だけは女性との関わりを持ち始めたら、世の中で述べられるような不満、怒り、恨みが私へ向けられないとなぜ思えるのか。「私と出会わなかったことで、得られたはずの幸せを逃してしまった人がいる」と考えるのは傲慢にすぎる。なんだい、あんた神様にでもなったつもりかい? 「下駄を履かせない正しくて公正な目線で評価すればお前なんかが好かれるわけないんだよ」という内なる声に逆らうことは難しい。継続的な婚姻は、幸福な例外であるか、不満があるがまだ別れていない、別れられない苦境にいるなどがありうるだろう。そんな中で、やっぱり良好な関係を築いているカップルは凄すぎる。結婚しているひと、交際が破綻していない人々とは、すごい偉大な者たちばかりなのだ。当人たちが幸せだと感じているなら、なおさらだ。あまりにも外れ値だ。私がそのような例外になどなれるはずもなく。

素晴らしいことに、私には背負うべき家族がいない! 独り身でよかった。こんな人生いつだってやめられる。それに、家庭を持っていたとしても、パートナーがいることの幸福への寄与は一次的なブーストにとどまるとも言うし、やれ家事をしない、やれ育児をしないと言われ続けるのだ(私は至らない人間だからちゃんと責務を果たせるような人間にはなりえない)。相手から好意を抱かれているというのは自信過剰の誇大妄想。女性は男性全体がうっすら嫌いで、男性はうっすら女性が好き、と見せかけて実は女性は嫌いで女体が大好きな存在。だから、「お前らは気持ち悪いものなのだ」という自覚を持ってもらった方が社会的には良いはずだ。不快害虫みたいに。